お願いです。晏侶さんの石像を元の場所に返してください！

来春の晏侶石像展に向けて、コア作品ほぼ完成
・・哀しい！虚しい！心が叫んでいる！
参道の石像、一体、一体が一身一念像

　11月2日午前8時43分、携帯に一通のメールが入った。東慶寺へ向かって急ぎ足で歩いていた時だった。同月1日から2日までの予定で始まった北鎌倉匠の市に出店中で、午前9時からの“店”のオープンの時間が迫っていた。
　
　メールの発信人は晏侶さんからだった。タイトルに「参道の石像盗難！」とあり、本文には「・・哀しい！虚しい！心が叫んでいる！」とあった。「参道とは円覚寺から円覚寺の塔頭の白雲庵に至る小路のことに間違いないだろう。これは大変なことになった。どの石像が盗まれたのだろうか」。そう思って、すっ飛んで現場に向かった。

　この小路沿いには、たくさんの晏侶さんが制作した石像が奉納されている。わたしの初孫の福ちゃんをイメージした石像「翔舞輝福観世音菩薩」もこの中に入っている。晏侶さんはこれらの石像を一体、一体、心血を注いで彫った。ある時はのた打ち回りながら、命を削るような思いで…。

　白雲庵の前の切り株の上の「翔舞輝福観世音菩薩」は無事だった。それ以外の石像にも変化はないようだ。そのまま歩を進めた。そして、伝宗庵の上の切り株を見ると、あったはずの石像の姿がなかった。

　翌朝、晏侶さんから再び「参道の石像、一体、一体が一身一念像哀しいです」とのメールが入った。このメールに書かれた言葉に石像の意味が込められている。晏侶さんは「ある方」への感謝の気持ちを込めて、盗まれた石像を彫った。

　それを伝宗庵の上の切り株の上に奉納したといえば、「ある方」が誰であるかおおよその察しはつくというもの。参道は不特定多数の人たちが通る場所ではない。限られた人たちが通る場所である。石像を持ち去った方、お願いです。晏侶さんの石像を元の場所に返してください！