高倉健スペシャルとテニスのＡ・マリー四大大会初優勝

　去る９月１０日、ニューヨークで行われたテニスの四大大会最終戦の全米オープン最終日の男子シングルス決勝で、第３シードのアンディ・マリー（英国）は、２連覇を狙う第２シードのノバク・ジョコビッチ（セルビア）と対戦し、７―６、７―５、２―６、３―６、６―２で破り、四大大会初優勝を決めた。試合時間は全米史上最長記録に並ぶ４時間５４分に及ぶ手に汗握る激闘だった。

　この試合はWOWOWは１０日午前５時過ぎから実況中継され、わたしは午前６時過ぎからテレビの前に釘付けとなった。テレビにスイッチを入れてからしばらくして、マリーの表情がいつもと違っていることに気付いた。素晴らしく集中はしているが、穏やかで落ち着いていた。静かな佇まいを見せていのだ。この時点で「ひょっとして今回はマリーが優勝するかもしれない」と思った。

　もちろん、長時間の試合だったので時折、喜怒哀楽の表情を見せてはいたが、全セットを通じて、穏やかで落ち着いた表情を維持していた。記憶では試合が終盤に差し掛かったころだと思う。実況中継をしていたWOWOWのアナウンサーが、この試合におけるマリーの表情の変化についてコメントし、解説者も同調した。マリーはこれまで劣勢になった時に『あの表情がなければ勝てた』といわれていたのだ。「今日のマリーにはそれがない」

　９月８日に『プロフェッショナル　仕事の流儀』高倉健スペシャル（19:30～20:43、NHK総合テレビ）、同月１０日にはこの第２弾「高倉健へ異例の密着取材＆ロングインタビュー！『プロフェッショナル　仕事の流儀』（22:00～22:48、NHK総合テレビ）をみたが、全米オープンを観ながら、高倉健の言葉を思い出した。

　高倉健は役を演じる時、何より「自分の心によぎる本当の気持ち」を大切にするのだという。理由は心をよぎった本物は、自然とにじみ出ると信じるからだ。マリーは四大大会に並ぶロンドンオリンピックで金メダルに輝いた。この貴重な体験が「四大大会でいつでも勝てる、と言われんがら、あと一歩とどかなかったマリーの心を成長させ、全米オープンの時の表情になったのだと思う。男も女も“顔”は大切だ。