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無名人からの伝言―野口初太郎不屈の人生―(13) 取材ノート(14) 【東京市時代】 水平線以上に出ることを目標に定める “人生の成功モデル” を確立 ①辛苦に負けない ②見栄や虚勢を張らない ③誠意を尽くして仕事をする 定雇工夫を命ス 但シ日給金六十銭 明治四十二年二月二十七日 東京市市区改正局工務課 東京市では勉学の便宜を図るとの配慮から責任の軽い工夫名義で採用された。役所の勤務時間は夜間通学者に配慮し、午後四時までだった。同じ待遇で採用された菅君という同僚が一人いた。彼は東北の出身で、中学卒業後上京し、攻玉社工学校に通学していた。初太郎も同校に願書を出し、受験した。結果は合格。「入学者はいずれも中学卒業程度の学力あるものであった。独学だったけれどもわたしに同程度の学力が付いていたことが証明された」 当時、下谷徒士町に移転していた伯母の家に下宿させてもらうことにした。伯母の家から有楽町の東京市庁へ徒歩で出勤、勤務が終わったら芝区新銭座の攻玉社工学校にこれまた徒歩で通学した。通勤、通学の距離は片道六~七キロメートルあった。「学校は大体午後九時ごろ終了。それから伯母の家まで帰った。鉄道馬車の便があった。稀に乗る日もあったが通常は馬の尻を追いかけながら歩いて帰った。帰宅は午後十一時から零時ごろになった。それから夜食をとった。わたしは覚悟の上の苦行と前途を楽しみに頑張っていたが、伯母の家の者には夜食が遅くなって気の毒だった」。この生活は約二年半続いた。「予科は専ら英数学だったが、独学で基礎はできていたからさほど苦しみはなかった。本科に進んでからも一生懸命勉強して明治四十四年一月二十八日、卒業した」 初太郎の東京市時代で特筆すべきは、彼なりの“人生の成功モデル” を確立したことだ。この時代に初太郎は人生の目標を明確に定めた。「わたしは一つの目標を置いた。それはわたしの置かれた自身の教養や実家を含めての経済上の度合いが水平線以下であると思われたので、少なくとも水平線以上に出ることであるとそこに目標を定め、何事にも辛抱いたそうと思ったのである」 初太郎は目標を達成するための方法論を自ら考え出して実践し、目標を達成した。「成功の第一は辛苦に負けないこと、見栄や虚勢を張らないこと、誠意を尽くして仕事をすること、学問はもちろん経済的にも常に向上に努めており、同僚がいかに派手に振舞うとも不顧。わたしはわたしの信念に従い、『百万人の敵がいるといえどもわが道を行かん』と独行した」。同僚が赤靴を履いてさっそうと通勤していたが、初太郎はまったく平気で、不恰好な兵隊靴を履いて通勤、通学した。 経済観念の希薄なわたしは、初太郎が取ったこの時代の行動に驚かされた。なんと故郷の銚子に「将来成功したら別荘を建ててもいい」と考えて、土地を購入したというのだ。場所は清水台で将来の住家となる。広さは約二反、一坪平均六十銭。「薄給の上、苦学の身だったが、前途のごとき目標を置いて頑張ったので貯金も多少出来た。市内に家作を求め家賃収入を得んとも計画し、伯母に頼んで売家探しもした」。 こうした中で銚子の方から畑の売り物があるとの便りがあり、現地を訪れたら見晴らしがいいので別荘地としての好条件をそろえていると判断し、買うことにした。「二十歳台で未婚。しかも立派な官立学校出ではないが専門学校を卒業し、その上、佳(よ)い土地を求めたので父母も喜んでくれた。父は時々この土地を見回り、松の木などを植え込んで楽しんでいた。苦学中、このような余裕が出来たのは伯母の家に厄介になっていた故と感謝している」 しっかりものではあったが、まだ若かった。「学校を卒業してそのまま市の職員としてやっていけぬことはないが、常に夢ばかり追っており、朝鮮方面へ飛躍しようと考えていた」。しかし、伯父と伯母に相談すると「故郷に老父母も在り、海外へ出ることは心配かけるからそのまま辛抱せよ」と懇々と意見され、朝鮮方面への“高飛び”は断念した。断念したとはいえ初太郎の前向きな姿勢は変わらない。「どんな立場にあっても、向上心を捨てない限りは着々実るものだと、過去の経験によっても分るので、海外に出ないで一生懸命やろうと決意した」 「朝鮮方面へ飛躍」はかなり真面目だったようだ。「いろんな孤独な生活をしても一人で楽しめる芸を学びたいと思い、上野公園近くに居た尺八の師匠のところへ1カ年通って勉強した。しかし、少しは吹けるようになったが、生来音痴でものにならなかったので途中で止めにした」。将来の目標を定め、最大限の努力をすることを常に心がけたいかにも初太郎らしい尺八修行だった。しかし、いかに不屈の精神を持っていても音痴では、どうしようもなかった。実はわたしも音痴である。学生時代にギターを弾きたくてサークルに入ったが、上達の見込みがまったくないので一年弱で止めた。ちょっと苦い思い出であり、初太郎の心情が分る。
by kitakamayunet
| 2007-08-31 13:42
| 無名人からの伝言
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from マナブならcocoガイド
at 2007-09-03 14:39
タイトル : はじめまして
ブログ管理人様、突然のご挨拶を失礼致します 私たちは「学ぶ」事をテーマにした情報サイトを運営しているものです。 お役に立つ情報をご提供できればと思い、随時掲載、更新しております。 スクールやレッスン、資格等の情報も掲載しております。 尚、このトラックバックがもし必要ではない内容でしたらお手数ですが、削除お願いします。 失礼致します。 m( __ __ )m ... more
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from 北鎌倉湧水ネットワーク
at 2007-09-03 18:06
タイトル : 無名人からの伝言―野口初太郎不屈の人生―(15)
無名人からの伝言―野口初太郎不屈の人生―(14) 取材ノート(15) 【千葉県時代】(1) 千葉県耕地課への採用が決定 大利根用水の歴史、ここからスタート初太郎、従妹のすず子と結婚 長男覇人、二男新之相次ぎ誕生 大志の夢を抱いて上京した初太郎の向上心は衰えることを知らない。法科の通信教育にも挑み、常に教材を手放さなかった。そして「どうせ勤め人となるなら東京より自分の県の千葉県のために働いた方がいいと考えた」初太郎は、その目標に向かって行動を起こす。当時、千葉県議会議長をしていた佐原町...... more
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from 住まいのことなら!スマイ..
at 2007-10-16 12:32
タイトル : 住まい・暮らし
ブログ管理人様、突然の訪問失礼致します。 私たちは住まい、暮らしに関する様々な情報サイトを運営しているものです。 お部屋探し、マイホーム購入の際にお役に立つ情報をご提供できればと思い、随時掲載、更新しております。 尚、管理人様のサイトに不適切な場合は削除お願いします。 失礼致します。 m( __ __ )m ... more
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from あったかお鍋情報サイト
at 2007-12-23 18:44
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from あったかお鍋情報
at 2007-12-24 15:04
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from あったかお鍋情報サイト
at 2007-12-24 15:26
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from 太陽と海の楽園♪沖縄
at 2008-01-24 14:40
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from ナース♀尾崎ナナ ノーブ..
at 2008-05-25 18:15
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